事業所を訪問してメンタルヘルス対策の指導や研修に関わっていると、不調者への対応に関して個別的相談を受けることも多い。
メンタルヘルス不調者が未だに増え続けているのは全国的な傾向である。
その対策として、管理監督者に対するラインケア研修を毎年繰り返すなど教育研修を充実させる事業所も増えている。
しかし、そうした教育研修の成果を待たず、現場では早期発見どころか、突然の予想外の欠勤、原因不明の心身の不調、回復の見通しが立たない長期休職、職場復帰の度重なる失敗と再発、等々の対応困難なケースを抱え込んで苦慮する管理監督者も少なくない。
研修講師として職場訪問した際、質疑で「不調者への対応に悩む現場の苦境(不満?)」を投げ掛けられる事も多い。
言えることは、対策としての実効性(効果)が職場で吟味・確認されていないこと。安易に職場研修を繰り返しても、それだけではメンタルヘルス対策として全くもって不十分であると認識すべきである。
本来は、一次予防、二次予防、三次予防という全体的視野の中で、総合的・計画的な展望を持って、組織体制づくりと諸対策の推進を考えないと実効性は期待できない。
法律に基づく「メンタルヘルス指針」で「計画的・継続的」な組織対策を求められているにも関わらず、未だに「単発的・一面的」な対策に終始している事業所が多い。
特に「病気の兆候を発見し、病院で対処してもらう」といった「火が出たら消してもらう」という、結果対処型(それも「受け身」)の発想が強い。これでは「モグラ叩き」の追いかけっこに終始することになる。
さらに、頼れるのは「専門家」(医者)であって、自分たちでは何ら対処できないという「諦め」や「無力感」も背景に在る。
しかし、本当はもっと職場で踏み込んで「なぜ火が出たのか?」と原因を掘り下げてみることが必要なのである。
時間と経費と手間を掛けて選別・採用・育成してきた有望な社員が、なぜ中途で深刻な健康不調に陥り、能力発揮を妨げられる事態となったか、その原因とは何か、早期発見・未然防止できなかった職場要因は何か、といった組織的解明が十分為されているとは言えない。
メンタルヘルス不調は個人的問題とか特殊事例として扱われやすく、職場での原因究明が軽視される結果、職場復帰が失敗して有意な人材を失うだけでなく、業務環境や人間関係の諸課題を発見して組織改革や職場活性化を企てる貴重な機会(チャンス)をも放棄している、と自覚する経営者は少ない。
人間は「壊れたら修理」する機械ではない。本来、傷つきやすく「健康配慮が必要」な生き物である。
メンタルヘルス問題の根底にあるのは、社員や従業員を作業や業務処理を行う消耗品ロボットと同一視するのか、それとも、一人一人が独自の意思や感情を持った個性的で可能性を秘めた存在として尊重するのか、そういった人間観や職場風土、組織経営の基本的理念(哲学)が実は問われていると思うのである。
では、具体的にどのように職場のメンタルヘルス対策を深化させていくべきか? いくつかの視点を挙げてみよう。
▶ 「火が出たら消す」のではなく、「火を防ぐ」ための環境整備を
ストレス要因の洗い出し、心理的安全性の向上、業務の調整といった仕組み作りが必要。
▶ 「気づき」を促す日常の関わり
定期的な1on1ミーティング、同僚同士のチェックインの習慣化、職場での小さな変化を察知する仕組みを整える。
▶ 復職支援は「完全復帰」ではなく「段階的復帰」
短時間勤務や業務負荷の調整、定期的なフォローアップを組み込み、復職者が安心して働ける仕組みを。
具体的な対策の詳細は、それぞれの職場環境や文化に応じた調整が求められる。
ヒューマンケア熊本では、各企業の状況に応じたコンサルティングを提供しているので、興味のある方はぜひお問い合わせいただきたい。
詳しくはこちらから➡お問い合わせ